アイリス

すきなものをすきなときに

「蝶々事件ラブソディック」プレイ感想

フルコンプしたので、思ったことなど色々と感想を。

ネタバレしか書いていません。読んでも大丈夫な方は追記からどうぞ。

 

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コミックスを事前に読んでしまっていたので、大体の話の流れとかは理解していたのですが、それでもとても楽しめました。

でも全体的に、もやもやする終わり方が多かったのが残念でした。

 

攻略順は、「遙→将成→シドニー→イ織→理智」の順でプレイしました。

ひとまずは全体的な話を簡単に。

 

◆ゲームの流れ

攻略キャラの好感度を上げて話を進めていくノベルゲームです。

そして攻略制限がガチガチにかけられていました。

最初に攻略できるのは遙様と神藤さんの二人のみ。

神藤さんの攻略が終わった時点でシドさんとイ織さんのルートが解放され、イ織さんの攻略が終わった時点で理智さんのルートが解放されました。

攻略制限がかけられていると、誰からプレイするかといった悩みが発生しないので、個人的にはかけてくれてありがとうという気持ちです。

 

◆システム面

データの読み込みが遅い印象があります。

イライラする、とまでは思わなかったですが、人によっては不便さを感じた人もいるのではないだろうか。

 

◆エンディング

各キャラ毎にエンディング曲が違うので、毎回楽しみにしながらスタッフロールを見ることができました。

まさかバッドエンドも曲があるとは思っていなくて驚きました。

どの曲も気に入っています。

 

◆スチル、シーン回想

スチルについては基本的には絵が綺麗だなと思うことが多かったけれど、時々、キャラクターの顔が違う、と思うことも。それと、ここでスチル発生しないの?と思うことも。

シーン回想は、各章をまるまる読み返すことができる「事件記録」が個人的に嬉しい機能でした。この話、誰かのシナリオで見たけど何処だったかな?と思った時にすぐに読み返しができるのは、とてもありがたいです。

 

◆トロフィー

トロコンしているので、書いておきたいことを。

バグなのか分からないけれど、理智さんの攻略を始めてもいないのに「スチルをフルコンプしました!」みたいな表示が出てきた時はとても驚きました。いや全然揃ってないよ、と一人で突っ込みを入れてしまいました。

それと音声記録でプレイリストを作成するのが少し面倒だな、と思いました。

 

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以下、各キャラについての感想を。

短くまとめるつもりが結局長くなりました。

 

■狐射堂遙

百合だと言ってごめんなさい。

あとどのルートでも遙様はえれな嬢に優しくて、そして味方でいてくれるところが、とても好きです。

遙様ルートは、家族皆殺しの話とか女性姿である理由とか狐射堂家の一族の秘密とか、苦しくなるような話が多すぎて、シナリオを読むのがかなり辛かったです。

最初は、陰陽師の仕事の時も女性姿なのは何故だろうか、仕事がバレたくなければ本来の姿の方が仕事しやすくないか?と思っていました。ごめんなさい。きちんと理由があったんですね。

女性でなければ狐射堂の力を使えない。だから自分は女でいなければいけない、と。それなのに、女だとえれな嬢をすぐに守れない。男であればどんな時でも守ることができるのに、という思いにもどかしさを感じました。しかも男でありたいと願えば願う程、非徒化を進行させてしまうというのは残酷なお話ですね…。

遙様本人も知らなかった話という時点で絶望し、遙様のお祖母様は「狐射堂の血を絶えさせてはならない」しか言わなくて絶望し、あまりにも酷い状況にPSVitaを何度もぶん投げそうになりました。

エンディングもなんだか安心できない終わり方で、頭を抱えました。

治療薬も無いし、「生まれながらの非徒」だからきっと遺伝子レベルでの治療ができない限り、ずっと非徒になる可能性を抱きながら生きていくのだろうな、と。考えるだけで胃が痛くなるので、なんとかしてほしい。遙様を、幸せにさせてください。

あと遙様ルートは、万葉さんがとても好きでした。主を本当に大事にしていることが伝わってくる人でした。

バッドエンドは、精神的ダメージが強すぎました。メリバみたいな終わりはいやだよ…。

 

■神藤将成

神藤さんの心情が唐突に変化することなく、分かりやすく丁寧だと思ったルートでした。

最初は威圧感がありすぎてとても怖かったです…。でも自分に非があれば正直に謝り、相手をきちんと認めてくれる、とても真っ直ぐな性格の人。どう考えても自分の好きなタイプです。そしてちょっとした優しさがとてもよいです。

えれな嬢とホテルのレストランに行った時、えれな嬢が二つのメニューのどちらを注文するか悩んでいたら二つのうちの一つをえれな嬢が、もう一つを神藤さんが頼んで、最終的には自分の口には合わないからえれな嬢が全部食べろと言ったところ、とても好きです。彼の不器用な優しさがうまく表現されているなと。

「女は下がっていろ」とか、男尊女卑みたいな言葉の数々にもやもやしていたけれど、「女の人は弱くて儚くて容易く消えてしまう。だから守らなければいけない」という思いの裏返しというのが、なんかもう、考え方までも不器用ですね。好きです。

恋愛過程がすごく好きな神藤さんですが、まさか非徒化させる薬を予防接種という形で投与されるとは考えてもいませんでした。

神藤さんは絶対に非徒にならないと思っていたので、個人的にはショックでした。ただ、さすが自分に厳しいだけあって、えれな嬢の香りに負けまいと必死に自我を保とうとする様は、ただただ尊敬。

バッドエンドで姿形が非徒と化して自我を失いそうでも、こんな風になってしまうなら自分が死ぬ方がいいと考えてわざと軍に撃ち殺されようと表に出るところ、本当にどこまでも真っ直ぐな人だと思いました。

神藤さんも遙様同様に、非徒になる可能性を抱きながら生きていかなければならないエンディングを迎えたので、もやもやしました。早く治療薬作ってください。

 

■シドニー・ワトキンス

シドさんのシナリオは、とても独特。

どのようにえれな嬢と関わっていくシナリオなんだろうと思っていたので、一番楽しみにしていた人です。

最初からとても優しくて紳士的で、一人で抱え込まずに自分に頼ってもいいんだと言ってくれて、甘やかしてくれます。

しかし好意的ではあるけれどその好意的な対応は恋愛的なものからなのか、それとも不遇な環境のえれな嬢に対してただの同情心なのか、どちらなんだろうか、と何度も思いました。遙様、神藤さんと比べるとシドさん本人がとても落ち着きある人だからなのか、心情に大幅な揺らぎが無く、読み取りにくかった気がします。

何をするにも器用にこなしてしまう人、というイメージがあり、シドさんが抱える「何か」に近付きたくてもなかなか近付かせてくれない、そんな印象が強かったです。

しかしシドさんルートにはユアンさんがいるお陰で、紳士的で優しいシドさんだけでなく振り回されるシドさんが見ることができました。そしてお二人が並ぶと、とても目の保養になります。

ユアンさんもシドさん同様にとても優しくて、紳士的に振舞ってはいるけれど、実際は心に問題を抱えていたので、ユアンさんを救えるルートをくださいとプレイ中に何度も思いました。

ロマノフ王家の生き残りで、ユアンさんが従兄弟で、そしてシベリアでの悪夢を経験していることは、会話の端々から何となく予想はついていたけれど、シドさんから直接話されるとものすごく重みを感じて、とても胸が痛くなりました。ここで初めてシドさんの隠していた感情が出てきた気がします。とにかく一人で抱え込まないでと言い続けたくなるレベル。こんなに大きなものを抱えていれば、シドさんがえれな嬢になかなか言えずにいるのは当たり前だ…。

終盤が駆け足で進んでしまったのが残念でしたが、イベント的にもシナリオ的にも私の好きな要素がとても多かったので、一番好きなルートです。エンディング曲も賛美歌みたいで、クリスチャンであるえれな嬢と、彼女に天使様と言われていたシドさんの二人に、とても似合う曲調だなと。

そして繰り返し伝えたい。ユアンさんを救えるルートください。

 

■源イ織

初見ではどうしても恋愛に発展するイメージがつかなかったです。ごめんなさい。

本当に攻略できるのか、とても不安でした。

イ織さんが言っていた、非徒の特徴である「反社会的人格、良心の欠落、他者に対する共感性の欠如、過大な自尊心、自己中心的な行動」がはっきりと表れており、どう考えてもやばめな人というイメージが強すぎて、精神を削られていく感覚がずっと続いていて、シナリオを読む度に疲労を感じていた気がします。

しかもゲームを持ちかけてイ織さんが勝利する度にえれな嬢へ絶望を与える様子は、割と本気で泣きそうでした。

全然距離も縮まらない、彼の心も見えない、これは詰んだなと思っていました。でも途中からイ織さんの持つ心の闇が見え隠れしつつ、そして少しづつ距離が近付いていくので、どんどん彼に惹き込まれていきました。

そして彼が何故、享楽主義であるかのように振舞うのか、きちんと理由があってのことなんですね。

14歳で非徒化する薬を投与され、結果的には結核も治ってめでたしめでたし、と思ったらその薬は香月夫妻を殺害して得た薬だと知る、なんて、ショックどころじゃない心境だったと思います。他人の犠牲の上で生き延びるなんて、これから先に「生きたい」と願いながら生きていくのは難しいでしょう。年齢的にも受け止めるには重すぎます。

「生きたい」と思えないのだから、「死ぬ」に至るまで人生はゲームだという形を取らないと生き続けられないなんて、あまりにも悲しい。けれど、そう考えても仕方がない気がします。

終盤で「生きたい」と思えるようになった時に心情を吐露した姿を見て、イ織さんがあまりにも儚くて消えてしまいそうで、そして迷子の子どものように見えて、胸が締め付けられそうでした。

途中までの話の盛り上がりがとても良かったけれど、エンディングがあっさりとしていたので、おや?と思ってしまいました。

バッドエンドは、悲しいけれどイ織さんらしいかも、と妙に納得してしまいました。

 

■神藤理智

まさか一章から個別ルートなんて、思ってもいませんでした。

過去から現在に至るまでの背景が大きすぎて、私の頭脳では上手く纏められない…。

生まれた時から「感情」を形成する機能がない自分を「失敗作」だと認識している。生まれながらに壊れているのだから、そんな壊れた自分をもし治せるならば神様だけだと考えている。そして壊れた理智さんを一時的にでも治すことができたのが、えれな嬢の感情の揺らぎ。だから彼女は、理智さんにとっては神様。そんな神様の為の世界を創ろう、と。

内容を整理する為に書き出してみたけれど、壮大すぎて思考が追いついていません。

理智さんにとってこの計画は、悪意なんて無くて、えれな嬢が大切で守りたいから、彼女にとって安心な世界にしたいから。でもえれな嬢に「このやり方は心が死んでしまう」と言われて、どうしたらいいかよく分からなくなって、計画が止められたら世界に自分が存在する意味がない。存在するだけで絶望だ、と。

ものの捉え方というか、受け止め方が、真っ直ぐというか、ただただ純粋なんでしょうね。だから母親に「人でなし」と言われた時も、自分はそういうものなんだと当たり前のように受け止めてしまったんだろうな、と。そして本当はそういったことに傷ついていたのにそのことに自分で気付かずにいたなんて、あまりにも悲しい。

終盤は理智さんが幼い子どものように見えてきて、えれな嬢もっと抱き締めて離さないであげてくださいと思いました。

バッドエンドは、怖すぎて思考停止しました。

そういえば理智さんルートは周防さんの心が垣間見えた気がして、今まで苦手だと思っていてごめんなさいという気持ちになりました。非徒ではなく人間っぽさが表れていて、私の中で好感度が急上昇しました。

 

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作品の設定や世界観とか、最初は遙か6っぽいな…?と思っていましたが、プレイしてみると表面的な設定が似ているだけで、奥底は結構違うなと感じました。

そして改めて思うことは、やっぱり全体的にもやもやする終わり方だったなと。

とは言え、楽しめたのでよし、です。