アイリス

すきなものをすきなときに

「ビルシャナ戦姫~源平飛花夢想~」プレイ感想

久々にゲームをプレイする時間がとれたので、感想という名の自分用メモです。

ネタバレしか書いていません。読んでも大丈夫な方は、追記からどうぞ。

 

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源平と聞いて買わずにはいられませんでした。主人公は源義経で、しかも女性。(最初にこの設定だけ見たとき、「宇宙意識に目覚めた義経」のことか?と思ったのは自分だけだと思う…)

女性であることを隠して男性として育てられた、と。この設定をどのように活かす作品になるのだろうかと、楽しみにしていました。

 

作品の印象として。

義経本人も知らなかった真実を、各ルートを通して少しずつ暴いていく作品でした。

「恋愛」より「秘密を暴く」の方に気持ちを引っ張られた気がします。でも楽しんでプレイできたので満足です。

それと攻略対象ではないキャラのビジュアルが好みすぎて、なぜ攻略出来ないんだと頭を抱えました。

少し気になった点は、異類の存在とかが苦手な人は戸惑いそうだな、と。公式サイトを見てもそのような情報は載っていなかったので。

 

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攻略は公式の推奨する攻略順(教経→弁慶→春玄→頼朝→知盛)でプレイしました。

以下、攻略した順に各キャラの感想を。

 

■平教経

本作品の個人的ダークホース。好敵手という関係性がこんなにも良いものとは…。

最初に出会ったときは挑発的な態度だったので、苦手かもしれないなと思っていました。でも、義経と戦うためだけに平家の名を捨てて、民と関わっていくことで今まで視野が狭かった自分に気付き、人間的に成長していく姿がとても素敵で。どんどん魅力的な人に変わっていきました。

敵同士であるにもかかわらず、お互い無意識に惹かれていく…という好きな要素が詰め込まれているシナリオです。

終盤、壇ノ浦での一騎打ちはどのシーンよりも甘いシーンに見えて仕方なかった。剣戟=愛の言葉、と。この等式、最高ですか。

恋愛エンドはもちろんよかったけれど、悲恋エンドも二人らしい終わり方ですね。なんだか納得してしまう終わり方でした。

それと教経ルートの知盛・重衡の平家兄弟が好きすぎて、教経ルートの時間軸に留まりたいと思ってしまいました。二人の立ち位置が教経という弟のような存在を見守り、からかうお兄ちゃんたちでした。可愛すぎか。二人が登場すると雰囲気がゆるい感じになりますね。このゆるさ、とてもよい。

「秘密を暴く」ことや「異類」の要素から離れているシナリオだったので、個人的に一番シナリオを読みやすかったな、と。

 

■武蔵坊弁慶

シナリオの感想としては、少しモヤっとしました。

弁慶というキャラクターが嫌いというわけではないのです。

平泉で過ごしていくうちに、弁慶との信頼関係が深くなっていく過程が好きです。特に義経が頼朝兄上からの参陣要請に対して決意を表した時の義経が弁慶に視線を送るシーンが本当によい。安心と信頼の主従関係、最高か。

恋愛面では、徐々に主従以上の気持ちをお互いに抱き始めるというのがよかったです。

好きな部分はあれども。

平家兄弟の存在感が強すぎてメインの座を奪われてしまったシナリオだな、と感じました。こんなことがあっていいのか。いや、よくない。教経ルートではゆるい感じの雰囲気を出していたのに、弁慶ルートだと兄弟が怖すぎました。最後まで存在感が強かったです。

終盤、壇ノ浦の戦いで重衡が理性を失った姿を見た知盛がかけた言葉を聞いて震えました。あまりにも自分好みで。「何にも興味がない」と他ルートなどで頻繁に言われている知盛にも、肉親に対する愛情は持っているのだな、と感じられた言葉だと思います。立ち絵の表情も秀逸すぎた。

あの兄弟、なんてずるい存在なんだ。

 

■春玄

あ、やっぱりね。と。

弁慶ルートのエンディングで頼朝兄上のもとに残ったと記されていたのを見たときに、あれ?と思ったので。幼馴染という設定だけで終わるわけがなかった。

春玄が本物の源氏の末子であるならば、義経は一体何者なんだろう…と思ったシナリオです。義経自身も「自分が何者なのか」が分からずに悩んでいましたが、そんな中で「誰であっても関係ない」と言ってくれる春玄のかっこよさよ…。

女性的な見た目に反し、内面が男前というギャップを見せつけてくる人ですね。ずるいですね。すきです。義経に想いを告げるシーンも男前でかっこいいなあ、と。

恋愛エンドは教経と似たような結果ですね。ですが恋愛エンドに至るまでの経緯が異なるので、別物として楽しめました。異類の要素が登場しない点も、個人的に良かったと思うポイントです。

それにしても壇ノ浦での戦い前夜に春玄が頼朝兄上に「死んだように見せかけるために殺してくれ」と伝えていましたが、見せかけとはいえ頼朝兄上はまた自らの手で家族を殺さなければならないんですね…。

春玄ルートの頼朝兄上には肉親の情など持っていないと思いますが、信頼とかは持っていただろうし、なるべくは殺したくなかったのでは、と思ったり。

『俺たちの死をもって――弟として、兄上が源氏の棟梁につくその道をお支えできればと思います』と春玄が言った後に、頼朝兄上が微笑んだのが印象に残りました。父や兄との最後のやり取りを思い出したのだろうか…。

悲恋エンドはどうしてそうなった、と思いました。ハッピーエンド至上主義にとっては心臓に悪すぎる。怖い…春玄が怖い……。もうあのエンドは見られない…。

 

■源頼朝

最初の頃は話しかけても「……」ばかりで、怖い人という印象しか持てませんでした。

立ち絵の表情とかも全く変わらないし、これからどのように恋愛へとスライドしていくんだ、と思っていた時期がありました。

「唯一の家族なのだから兄上ともっと近付きたい」という真っ直ぐな想いを向けてくる義経と、そんな義経にゆっくりであるけれど確実に心を侵蝕されていく頼朝兄上の様子を見ているのが本当に楽しくて仕方なかったです。

一片の私も持たぬように生きていたのに、義経という弟の存在で揺らぎが生じ始めている様子が『義経。お前は以前、私のことが怖いと言ったな』『私は……お前の方こそ、怖い』という「言葉」で初めて現れたな、と。言葉数が少ないからこそ、この「言葉」は響きました。この言葉を言うに至るまでの声色や表情の変化、とにかく好きすぎた。繰り返し再生したい。

あとこの作品、立ち絵の表情差分が細かいなと思っていましたが、頼朝兄上のシナリオで表情差分に感謝を述べたくなるとは思ってもいませんでした。

一ノ谷の戦い前まではお互いに肉親の情があるから相手を大切にしていたと思っていたのに、義経が女性であり身内ではないと分かってからの想いや言動の変化とか、見ていて楽しかったです。

そういえば頼朝兄上が「妹でなくとも人でなくても関係ない」と言っていましたが、春玄も同じようなことを言っていたのをふと思い出しました。やっぱり春玄と兄弟なんだな、と染み染みと感じたり。

恋愛エンドはすごく好きな終わり方でした。私を捨て天命を成し遂げるためだけに一人で生きていた人が、義経という安らげる場所を得られただけで、こんなに柔らかい表情を見せるなんて。表情差分ありがとう。とにかく幸せになってください。

 

■平知盛

他ルートだと義経に対する執着に恐怖しか感じなかったので、自ルートでも恐怖の執着を見せてくるのか…?と恐る恐るプレイしたら、そんなことはなくてびっくりしました。でも序盤はやっぱり執着が怖かったです。

富士川の戦いの後に理由あって知盛と旅をすることになりますが、旅の中で変化していく知盛の感情を見ているのが楽しかったです。

最初の頃の感情は、「泣き顔が見たい」「戦場で絶望したり傷ついたりしてほしい」だったと思います。

その感情が、「泣き顔よりも笑顔が見たい」「傷つく姿を見たくない」に移り変わっていき、六波羅で義経が動揺して邸から立ち去ろうとしたシーンで『このまま戻ればそなたはきっと深く傷つく。……私はそんなそなたを見たくはない』という言葉が出てきた瞬間、感情の変化をものすごくはっきりと感じることができて心が震えました。『離したくないからだ!』と声を荒げるところとかも、感情を露わにしているのが見えたのですごく良かった。

一ノ谷の戦いで義経が力を暴走させてしまった時に、「傷つく姿を見たくない」「涙を流す姿を見たくない」という理由で、義経の力を抑えようとしたり戦場から攫い出そうとしたり。義経とともに生きていきたいと思った矢先に蓮月から崖に落とされた時に、源氏に投降することで平家との戦いに参陣して義経を助け出そうとしたり。

滅ぼしてほしいと考えていた人が、感情だけでなく行動もなりふり構わず…と変化していったのも見ていて面白かったです。

義経の感情とかも見ていて楽しかったです。異類の力を使った影響で気を失い、予期せず春玄の気を喰らってしまった時に知盛の言葉の意味や苦しみを実際に目の当たりにしたことでやっと理解し、「知盛に会いたい」と思いを馳せるシーンとか、印象的です。

恋愛エンドは、大団円エンドも含まれているのか…?と思ったエンドでした。

 

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ifエンドについても少しだけ。

とても良かったです。4人とも攻略対象じゃないのがおかしいと疑問に思うレベル。

ひとまず、それぞれ一言感想を。

 

■平重衡

本作品内で一番好きなビジュアルです。

純粋で残酷、というアンバランスを持つ人。惹かれないわけがなかった。

教経ルート以外では必ず死んでしまう人なので、なんで?こんなに魅力ある人なのになんで?あと話し方が可愛すぎないか?と頭を抱えながらプレイしていた記憶しかありません。死亡フラグをへし折りたいと切実に思った。

知盛兄上が興味を持っている人間だから…と軽い興味でちょっかいを出しただけだったのに、気付いたら自分自身が義経に本気になっていたという感情の変化に私の感情が追いつかない。

 

■佐藤継信

柔らかな物腰の人。しっかりしていて、頼りたくなる印象の人。

垂れ目と微笑みの組み合わせって最強ですね…。

普段はしっかりしている人が不安を吐露するシチュエーション、すきです。

「主として守りたいだけでなく、大切な女性として守りたい」という告白からの『もし叶うのなら、貴方の痛みや傷がすべて私に移ればいい』でわたしはしんだ。

 

■佐藤忠信

明るくて人懐っこい印象を与える人。動物みたいな可愛さのある垂れ目…。

女性だと分かった時の動揺と落ち込む姿を見た時に繊細な人だなと。

翌日から言動がおかしくなる様子、見ていて笑ってしまいました。『くっ……己の単純さが憎いぃぃぃ』が個人的に好きなシーンです。

 

■佐々木高綱

忠信同様、明るくて人懐っこい印象を与える人。そして前向きな性格の人。あと笑顔が可愛いすぎる。

補佐としての仕事をそつなくこなしたり、景時殿が義経に厳しい言葉を伝えてきた時に反論したりと、意外性の塊でした。

義経が不安になった時、安心できるような、救いあげてくれるような言葉をくれる人だな、と。

 

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最後に。

他にも書きたいこと(特に異類関連)があったのですが、書き始めると長くなりそうな気がするのでやめておきます。

事前情報のなかった設定に驚きつつも楽しめたのでよし、です。

歴史モノ、男装、異類…と、人を選ぶ作品だと思うので、この辺りを気にしないのであれば十分楽しめるかなと思います。