アイリス

すきなものをすきなときに

「ピオフィオーレの晩鐘」プレイ感想

Vita版、フルコンプしたので感想を。というよりも備忘録になりました。

書きたいこと全部書いておこうと思ったら、とても長くなりました。いつも以上に纏まりがない文章である。

 

ネタバレしか書いていません。読んでも大丈夫な方は、追記からどうぞ。

 

***

 

久々に、もう一度プレイしたいなと思わせてくれた作品でした。

限定版を買い直すとは思っていなかったし、Switch版を買うとは思っていなかったし、サントラとVFBも買うとは思っていませんでした。ハマりすぎである。Switch版は未開封なので、積んでいるゲームが落ち着いたらプレイしたいです。しかしいつになることやら…。VFBも購入したはいいけれど未読なので、こちらはそろそろ読もうと思います。

そんな個人的な事情は置いといて。

作品についてはマフィアを攻略対象としていたので、暴力的なシーンが多いから対象年齢が高めなのかな?糖度は低めなのかな?と思っていたのですが、全然そんなことはありませんでした。恋愛シーンがとても甘いです。しかし恋愛の甘さに比例するかのように暴力的なシーンが見ていてとてもしんどくなります。

 

ひとまず全体的な感想とか。

 

◆シナリオ

とても面白かったです。

なぜ主人公がマフィアの抗争に巻き込まれていくのか、というのがきちんと描かれているし、攻略対象との恋愛過程もとても面白いです。共通ルートはとても短く、個別ルートはそれぞれ展開が違うので、飽きずに読み進めることができます。

ストーリーの始まりと終わりの演出についても少し。

とても面白い演出でした。始まり方は、映画みたいなプロローグムービーから。ロベルトが各組織についての説明をしてくれるので、ありがたい。2周目以降はスキップできるのに、毎回スキップせずに見てしまいました。

また、各攻略対象とのBEST ENDを迎える度にカウントダウンがゼロに近付いていくのも、演出が細かいなと。FINALEルート解放で映画の予告ムービーらしきものが流れてきた時は、かなりテンションが上がりました。

 

◆システム

好感度が上がっているのか下がっているのか全然分からなかったです…。自力でプレイすることを早々に諦めました。攻略サイト様には感謝しかありません。

どうやら個別ルートに入るとステータスが見られるようになり、色が付いていない百合の花と攻略対象が表示されるようです。

最初は見方が分からなくて、とりあえず頻繁に見返しておこうと思いながら見ていたら、百合の花に色が付いていくことで好感度が分かるということに途中で気付きました。これ、難しいですね…。

そしてMEANWHILE STORY。このシステムは面白いなと。

主人公以外の人達が今、どのようなことを話しているのか、どのような行動を取っているのか、というのを見ることができます。このシステム、キャラクターをより深く知ることができるから楽しいです。

しかし表示されるのが一瞬だったので、何度も見逃して、何度も巻き戻しをしていました。せめてもう少し表示を長くしてほしかったです。

 

◆エンディング

BEST END、GOOD END、BAD ENDの三種類。

驚いたのは、どのエンディングでも攻略対象が容赦無く死ぬところ。サブキャラクターが死ぬ、というのはよく見かけるけれど…。全員生きているのはFINALEルートだけです。つらい。

まさか自ルートじゃない時に攻略対象が死ぬとは思ってもいなかったので、最初はPSVita持ったまましばらく動けなかったです。なんと血飛沫の多いことか…。

作品の世界観的に仕方のないことだと理解はしていても、精神的ダメージが強かったです。

 

◆音楽

作品の世界観ととても合っていますね。

聴き直したくなるBGMが多かったように思います。サントラをうっかり購入してしまいました。オープニングとエンディングをフルで聴きたかったので、購入して良かったな、と。

あとエンディング曲についても。

各エンディング毎に曲が違っていました。個人的にはBAD ENDの曲が好きです。BAD ENDがとても苦手なのに、曲は好きだから聴きたい。矛盾しすぎである。

 

◆イラスト

綺麗です。本当に綺麗。

髪のサラサラ感とか、睫毛の細かさとか、とても自分好みです。個人的に好きな睫毛はダンテさんとニコラさん。

あと、スチルを見ていてすごいなと思ったこと。

リリィちゃんの服装が立ち絵の服装だけではないところ。髪型も服装によって変わるのは、すごい。攻略対象の性格とか服装のイメージに合わせてリリィちゃんの服装を変えているのかなと、なんとなく思いました。

ダンテさんルートでは、清楚で上品なお嬢様っぽい服装。ダンテさん自身の服装が着崩したりせず上品なので、二人が並ぶと美しい。

ギルバートさんルートでは、装飾品が比較的多めな服装。ギルバートさん自身、指輪やネックレス等、色々身に付けていますよね。

楊さんルートでは、言わずもがな、チャイナドレス。

ニコラさんルートでは、シンプルなデザインの服装。それと他ルートだと淡い色の服が多かったのに、彼のルートでは濃いめの色の服を着用していて面白いなと思った記憶があります。

オルロックルートでは、立ち絵の服装のまま変わらず。これは仕方ない…。

 

***

 

以下、各キャラクターとFINALEルートについての感想を。文章長いので少し補足。

「ダンテ→ギルバート→楊→二コラ→オルロック→FINALE(アンリ)→FINALE(大団円)」の順で書いています。

 

■ダンテ・ファルツォーネ

リリィちゃんと結ばれることは、偶然ではなく必然。

攻略対象とヒロインに何かしらの結びつきがあるような設定に弱いです。本当にありがとうございました。

 

ダンテさんについてまず思ったことは、ビジュアルが美しい。

銀の髪に蒼の瞳は美の暴力すぎる。

ビジュアルだけ見ると冷たくて厳しそうな人という印象を与えるけれど、彼と関わってみると違いました。

リリィちゃんが屋敷で不自由な思いをしないように、本とか花とかレコードとかを贈ってくれる。

護衛のレオが不在の日が多くなって一人の時間が少し寂しいかもとリリィちゃんがうっかり零すと、彼女が寂しくならないように仔猫まで贈ってくれる。しかしダンテさんからの贈り物という事実は伏せたままにしようとする。

ソフィアが死んだと告げた時には悲しむリリィちゃんのことを慰めようとしてくれたり、死んだことが嘘だとバレた時には嘘を吐いたことに対して謝罪してくれる。

陰から見守り続けて気遣ってくれる不器用な優しさと誠実さに、好感を持たずにはいられないですね。美しさはビジュアルだけじゃない、内面もとても美しい人。天は彼に二物も与えてくださった、グラッツィエ。

そういえば謝罪の時に真紅の薔薇を1本贈っていたけれど、心からの謝罪と許しを乞う際、それ以外には愛の告白の際に贈る、とのこと。しかもどちらも「大切な人」に対して贈る、と。そして薔薇の本数の意味を調べてみたら「一目惚れ」「あなたしかいない」と。なんだこれは…。ロマンチックすぎる。

 

思ったよりも平和なルートかなと思っていたら、ニコラさんの裏切りから、展開がつらかったです。信頼していた家族には裏切られて、大切に守ってきた街の住民からの信用は失われて、と。試練が重なりすぎである。

その後に自分はカポの器じゃない、ニコラの方が適任だったと語る姿。マフィアのカポとしてのダンテ・ファルツォーネではなく、一人の青年としてのダンテ・ファルツォーネの気持ちを聞いて、とても切なくなりました。

『俺は……。本当はただの臆病者だ。いつも怖かった。人の命を奪うことも、ファミリーの命を背負うことも俺には重荷だった……。それでもこの使命を与えられたから、虚勢を張って、カポであろうとしてきた。……俺はただの張りぼてだ。』

特にこの言葉は、聞いていて泣きそうになってしまいました。この言葉に対して臆病ではなく優しい人だと言ったリリィちゃん、貴方も十分優しいと思います。

そしてこの会話の後のダンテさんの告白、とても良かったです。

 

それとダンテさんルートの一番好きなところは、聖遺物を守る【墓守の一族】と【鍵の乙女】という要素。

「鍵の乙女はファルツォーネの後継者と赤い糸で結ばれた相手を占星術により導く」とか、「ファルツォーネの血筋の者と鍵の乙女が結ばれることで聖遺物の封印が解ける」とか、御伽話感が溢れていて大好きです。

エンディングの聖堂での告白も、王子様とお姫様みたいなスチル。演出が美しくて語彙力の喪失。良いシナリオでした。合掌。

 

■ギルバート・レッドフォード

攻略制限をかけられていたので、実はギルバートさんが全ての事件の黒幕でした、とかだったらどうしよう…と恐る恐るプレイし始めました。

シナリオはギルバートさん自身のことよりもブルローネ全体の問題についてを扱っているなと。攻略制限をかけていたのは真相に近いシナリオだからでしょうか。

3組織+教国(オルロック)が協力する流れとなるシナリオなので、ギスギスした雰囲気がないのはとてもよいです。安心してシナリオを読むことができました。

 

さて、ギルバートさんについて。

裏表がなく、男前で、とてつもない人たらし。この人すごい。非の打ち所がない。

リリィちゃんがギルバートさんに保護されるところから、既にかっこよすぎました。

リリィちゃんの『どうか助けてください、シニョーレ。』に対する返事が『ああ、助けてやるよ。ぜったいに、だ。』ですよ。さらにマフィアが支配するこの街でどこにいれば自分が一番安全だと思うかという問いの回答が『俺の隣だ。』ですよ。

街の人達とは友人のように接しているし、マフィア嫌いのロベルトまで協力させてしまう。マフィアとして本当に異質な人。天然人たらし、最高か。安心と信頼のギルバート・レッドフォード。好きです。

リリィちゃんには洋服を買ってくれたり、デートに連れて行ってくれたり、とにかく紳士的で優しいんですよね。

リリィちゃんが眠れないと夜の散歩に誘ってくれるところとか、夜風の冷たさで震えていたら何も言わずに自分の上着を羽織らせてくれるところとか、気遣いレベルが高すぎて惚れるしかなかったです。

 

基本的に決断がはやくて迷いがない人だなと思っていたけれど、カジノでリリィちゃんが賭けの対象にされるところで躊躇いを見せたところ、ギルバートさんのリリィちゃんに対する気持ちの変化の表れを感じることができて、とてもよいです。

気持ちの変化を早い段階から自覚して、でもその自分の変化さえも楽しんでいる様子も、とてもよいです。

カジノでのお礼としてイヤリングを贈るところとか、それをなかなか言い出せずに渡せずにいたとか、完全に特別扱いじゃないですか。しかもギルバートさんがイヤリングを直接付けてくれるとか。ギルバートさんの顔が近すぎてむりです、しぬ。

それとギルバートさんに対する自分の気持ちに気付いておらずにソファで眠っているリリィちゃんに対して『……早く気付けよ、リリィ』は、勘弁してください。言い方がよいです。余裕がありそうで、実際はない感じが垣間見えて、PSVita持ったまま崩れ落ちました。好きです。

 

最後にリリィちゃんが教会に戻る展開だったのは意外でした。でも本気だからこそきちんとしなければと言ったところで、私の中のギルバートさんへの好感度が上がりました。彼は一体どれだけ私の中の好感度を上げるつもりなのでしょうか。このままだとカンストする。

さらにエンディングでドレスが皺になると言ったリリィちゃんに対して『いいんだ』って余裕なさそうな言い方をしてきたところで、また私は崩れ落ちました。

 

ギルバートさんルート、ただ一人を除いてはみんな生きているし、組織間の抗争とか発生しなかったところが素晴らしいなと思いました。絶対に幸せにしてもらえるルート。

あとオリヴァーさんの「リリアーナ嬢」呼びがとても好きでした。何回もボイス再生しました。ギルバートさんとの会話中に時々、口が悪くなるオリヴァーさんにときめかずにはいられませんでした。

 

■楊

これはずるい。ずるいルートだ。

ものすごく悪い男なのに、気付いたら惹かれている。嫌いになれない。ずるい。

初対面からぶっ飛んでいる。出会い頭にキスをする奴がどこにいるのか。いや目の前にいたんですけど。

そして客室に案内されたと思ったら楊さんと同室という衝撃の事実。

一体何を考えているんだこの人は…と頭を抱えました。いや、多分何も考えてない。ただ「暇潰しになって面白い」ぐらいにしか考えていない気がします。

気だるげな話し方や自由すぎる行動、そして読めない感情の起伏、まるで猫みたいだなと思っていたら楊さんに手を出されそうになって必死に抵抗するリリィちゃんに対して『……まるで猫だな』と言ってきたので、それを貴方が言うのか…?と突っ込まずにはいられなかったです。

食事の時は楊さんの膝に乗せられて、楊さん自らリリィちゃんに食べさせる。ぶっ飛び具合、本当にすごい。たぶんこれも「暇潰しになって面白い」という理由なんでしょうね。

 

最初はリリィちゃんのことをただただ暇潰しとして相手にしていただけだと思うのですが、ランちゃんに無理矢理着せられたチャイナドレス姿のリリィちゃんを見て大激怒していた辺りから楊さんの気持ちが少しずつ変わったんじゃないかな、と。楊さん本人はおそらく気付いていないけれど。

大激怒した後に「感情のままに」リリィちゃんにチャイナドレスを買い与える。リリィちゃんが熊猫を気に入っていると知れば「感情のままに」熊猫のぬいぐるみを取り寄せてくる。

きっと楊さんの「感情のままに」とは、無意識のうちにリリィちゃんに惹かれているが故の行動なのでしょうね。

中盤付近でリリィちゃんが楊さんを受け入れた時に、楊さんが「リリアーナ」呼びから「リリィ」呼びに変わった瞬間は鳥肌が立ちました。愛称で呼ぶのも楊さんの中で無意識に何かが変わった瞬間なのでしょう。

 

今まで楊さんに振り回されていたリリィちゃんがエレナちゃんを保護してからは、エレナちゃんの看病を最優先して楊さんは放置状態、にはちょっとびっくりしました。でもこの放置のお陰で楊さんも色んな出来事に対して「考える」ことができたんじゃないかなと。

エレナちゃんを教会に帰したいと相談をした時とか、エレナちゃんを教会に送る日には楊さんが拠点から出てきたりとか、拠点に戻ってきてすぐの廊下にいたりとか、無意識に心配とか気遣いをしていたけれど、この時点では行動理由が分かっていないようだったので、よし、もっと考えるんだ楊さん…!と思いながら見ていました。考える楊さん、可愛く見えてきました。

そして楊さんからの愛の言葉を聞くことができるとは思っていませんでした。退屈の理由を「柄にもなく考えてみた」と。「好き」とか「愛してる」とかではなく、「惹かれている」という言葉で伝えるのは、楊さんらしいですね。

さらに『俺が手を離してもいないうちから、おまえが逃げるというのなら――俺はおまえを殺す。俺のものでなくなるなら、跡形もなく消えてくれたほうがいい』という、脅しみたいな、でも楊さんらしい愛の言葉。この言葉がものすごく甘い言葉に聞こえてくるのだから、すごい。

 

終盤の老鼠VSヴィスコンティ戦で、楊さんが抱きかかえていたリリィちゃんを投げ捨ててギルバートさんを殺しに向かったところ、好きです。

ギルバートさんが『惚れた女も見捨てるのか、おまえは……。』と言った後に楊さんがリリィちゃんに問い掛けるんですよね。『おまえはどう思う?俺が、おまえを見捨てたと思うか?』と。その問いに対して、『あなたは……、勝つために一番確率が高い方法を選んだだけ。』『それって、むしろ【守ってもらえた】ってことになるんじゃないかしら。』と。

こんな風に答えることができるのは、楊さんのことを本当に理解しているからこそなのでしょう。楊さんもリリィちゃんの回答に対してとても満足そうに、そして嬉しそうに笑ってキスしてくるのが、とても良かったです。

 

そういえばエンディングで楊さんの本当の名前を教えてもらえるとは思っていなくて、とてもびっくりしました。「昴(マオ)」とのことですが、SS読むまでは猫みたいな人だから「猫(マオ)」だと思っていました。

それにしても、楊さんの気まぐれな言動は見ていてとても楽しかったです。シナリオも面白かったです。あと双子は可愛いし、リーさんのことはなぜか嫌いにはなれなかったです。老鼠という組織を好きにもなるルートでした。

 

■ニコラ・フランチェスカ

心情がややこしい人、大好き。ビジュアルも私の好きなタイプでした。

髪のふわふわ感が好きすぎる。そしてブラウンの髪に、翡翠色の瞳。髪と瞳の色のバランスが、美しい。ずっと見つめていたい。

服装もジャケットの裏地とかサスペンダーとかシルバーリングとか差し色のポケットチーフとかネクタイピンに付いたチェーンをサスペンダーに留めていたりとか、細かな部分がとにかく好きすぎて、見ていて飽きない。

あとどうでもいいことですがニコラさんの「グラッツィエ」の言い方が好きです。時々、「よくできたね」みたいな意味を含めているような言い方の「グラッツィエ」ありません?あの言い方がとてつもなく好きなんですけど、細かすぎて誰にも伝わらない気がします。

話し方は優しくて、表情も優しい。でもなんとなく本能的に怖いと感じてしまう人。正直言って楊さんよりも怖いと感じたのは私だけか……。たぶん何を考えているかを意識的に見せない人だからなのでしょう。

自分は他人の領域へあっさりと入り込むのに、自分の領域には他人を踏み込ませない秘密主義とか、本当に自分の好きなタイプすぎる。

 

序盤は過剰すぎると思うくらい、優しいですね。

眠れないリリィちゃんのことを気遣って、ホットミルクを作ってくれる。リリィちゃんが眠くなるまで話し相手になってくれて、眠れるまで手を繋いで傍にいていれる。

自分が苦手な食べ物でもリリィちゃんが作ったものだと聞いたら平然とした様子で食べてくれる。

とても優しくて、甘やかしてくれて、こんなの絶対に好きになるじゃないですか。親しみやすい人だと勘違いしてしまうじゃないですか。

リリィちゃんが作ったお菓子を食べさせてもらおうとするニコラさんの姿を見た時、相手をからかう程度には仲良くなれたのかな?と思っていました。

中庭の膝枕ではニコラさんがダンテさんとの幼少期の頃の話を聞かせてくれる。しかしリリィちゃんが『ニコラとの距離が縮まったような気がして、嬉しい』みたいなことを言うと、『僕は犯罪者だ。僕を知っても、何の意味もない』と突き放す。

これ以上は自分の領域に踏み込ませない、といった態度。ダンテさんルートを読んだ後だったので、まぁニコラさんはそういう人だよねと思いながら見ていました。とはいえ、無意識のうちに気を許してしまったところもあるのかなと。

 

そして自ルートでもやはりファルツォーネを裏切るニコラさん。そうですよね、弟のような存在であるダンテさんのことを一番に考えて行動する人ですもんね。分かってました。

リリィちゃんを利用する為に今まで優しくしていただけでそれ以外の理由はない、と。ここからはニコラさんの態度が本当に冷たくて、話しかけても会話をさせてくれないんですよね。見ていて少し辛かったです。

しかしこの状態をなんとかしようとギルバートさんが一芝居打った展開がとても美味しくて。

騙されたと分かるとイタリア語のスラングを吐き出したニコラさん。普段のニコラさんからは見せないようにしているような言葉の発し方な気がして、ものすごくときめいてしまいました。その綺麗なお顔で汚い言葉を発するという差がとてもよいです。差の大きさに、風邪を引く。

この件を経て、以前の様に優しくはないけれど不自然に避けられたりすることはなくなり、ニコラさんと自然に話すことができるようになったのは嬉しかったですね。

 

そして休戦協定後にカジノ前でロベルトがニコラさんを狙って放たれた銃弾をリリィちゃんが庇い、腕に軽傷を負います。無言で厳しい表情をしたまま屋敷に連れ帰り、リリィちゃんを心配したが故に本気で怒るニコラさん。

ニコラさんが危ないと思ったら咄嗟に身体が動いてしまった、みたいなことをリリィちゃんが言った後に衝動的にニコラさんがキスしてしまうシーン、とてもよいですね…。普段は自分の感情なんて見せようとせず、言葉で上手く丸め込む人なのに。

理性的なニコラさんが、この時は本能の方が勝ってしまったことを表している気がします。こういうの大好きです。このシーンが好きすぎて何度も読み返してしまいます。

ニコラさんの領域にめげずに踏み込んできたリリィちゃんと、踏み込まれたことでいつのまにかリリィちゃんの存在が大きくなっていって感情を掻き乱されていくニコラさん。とてもよいです。

 

終盤のファルツォーネ・ヴィスコンティVS老鼠の銃撃戦で、ニコラさんの中で一番に守るべき対象だったダンテさんに背中を押されてリリィちゃんのもとへ向かう姿を見て、安心しました。ニコラさんはリリィちゃんを一番に選んだのだという事実をはっきりと実感させられます。マフィアとしてではなく、一人の男としてのニコラさんの行動。とてもよいです。

そしてロベルトVSニコラさんのシーン、ニコラさんがかっこよすぎました。最初は殺さないように言葉で説得しようとしていたけれど、リリィちゃんも殺すというロベルトの言葉を聞いて本気の殺意を向けた瞬間が、何度見ても痺れます。

『僕はね、こんな生き方をしているけれど、望んで人を殺したことなんてなかった。だけど、君のことは……。心底殺してやりたいと思ったよ。僕の――誇りにかけて』

この言葉、聞いていてぞくぞくしました。大事な人を傷つけるようなら容赦無い人ですもんね。知ってる知ってる。

 

ダンテさんとも和解できて、安心しました。

ファミリーから離れた理由をニコラさんがたった一言言っただけで理解するダンテさん。この二人の関係性、なんて美しいのだろうか。

ダンテさんが、ニコラさんがいなくて仕事が滞っているから寝不足だと拗ねたように言ったところが可愛かったです。普段は見せない弟のような態度ですね。

 

最後、本心を語ることにまだ少し抵抗があると前置きした上での、愛の言葉。

『僕はマフィアだ。その生き方は変えられない。君はきっと、いつか後悔する。僕を嫌いになる日がくるかもしれない。血に濡れた僕の手を汚いと思うかもしれない。でも僕は、君を離してあげられない。』と。

その後の『――だから、ごめん。諦めてくれる?』は、ニコラさんらしい言葉だと思いました。この言い回し、好きです。

そういえば二コラさんとダンテさんって、「自分はマフィアだけど、それでも一緒に在りたい」と自分達の立場をリリィちゃんに自覚させた上で愛を伝えてくれるよな、と思いました。そういう気遣いを自然にしてくるから、ファルツォーネの二人が好きなんですよね。

 

ニコラさんルート、演出も好きだったしニコラさんの性格も私好みでした。楊さんルートと同じぐらい、私の感情が忙しかった。とても楽しかったです。

 

■オルロック

読み進めれば進めるほど、しんどい。神はオルロックに試練を与えすぎではないか。

なかなかシナリオを進めることができなかったです。

今回は味方がいないのが、本当につらかった。大体は楊さんのせいだと思う。

 

最初に老鼠に身を置いていた時点で嫌な予感しかしなかったです。

他ルート同様に教会のみんなとは会えずに過ごすんだろうなと思っていたら、あっさりと楊さんが教会に通うことを許可してくれて、絶対に裏があるとしか思えず疑心暗鬼のまま進めていました。

案の定、老鼠の構成員を護衛に付けたり、リリィちゃんが神託で選ばれた聖女だと言いふらしたり、他組織を挑発するようなことしかしないんですよね。自ルート外だと「悪い男」「信用できかねる男」という印象を植え付けるのが本当にお上手な人ですね…。

老鼠の勝手すぎる行動について、オルロックもさすがに老鼠を信用すべきか疑うだろうと思っていたら、『ロズベルグ卿に協力出来る嬉しさ故。これが彼らなりの信仰心だろう』と言い始めたので、絶句しました。

ロズベルグ卿のことを絶対的に信じていて、さらに全ての人間が教国の教えや神様の存在を信じていると考えている。何故ならオルロックにとってその信仰心が「当たり前」だから。純粋すぎる。この純粋さ、危ういと感じる。

でもその後に、これ以上老鼠の保護下にいるのは危険だと判断したので少し安心しました。そしてオルロックの隠れ家に移動した時、隠れ家がクレタ地区なら状況もだいぶマシにはなるだろうと思っていました。私が浅はかでした。

最初に思ったことは、なんでこんなことになっているの?でした。本当によく分からなくて、頭を抱えました。

老鼠…というか楊さんは、自分にとって「退屈しない面白い展開」を作るために二人を追いつめているのは理解してる。理解したくないけど。

ファルツォーネが二人を追いかけるのも、理解してる。ダンテさんはオルロックに、父親と、兄のような存在のニコラさんを殺されているから。大切な家族が二度も同じ人間に殺されれば、そうなるよなと。これはまだ比較的理解できる。悲しいけれど。

でもヴィスコンティも二人を追いかけるなんて誰が予想できたか。少なくとも私は予想ができなかったです。理由を聞いた時は理不尽すぎやしないかと思ったけれど、ギルバートさんからすればマフィアとしての誇りに関わる問題なので、誇りを傷付けたまま姿を隠していた二人にはきちんと責任を取ってもらう、ということなのか。

 

クレタ地区でヴィスコンティに襲撃されて怪我をしたオルロックをリリィちゃんが看病する話は、今まで幸せとも不幸せとも思っていなかったオルロックの「心が満たされていく」様子が描かれていたような気がして、なんとも言えない切ない気持ちにさせられました。

『本当は、いけないのかもしれないけど……。おれは、あなたと出会ってからが、これまでの人生で一番、楽しいし、うれしい』という言葉に泣きそうになりました。全然いけないことじゃないし、貴方の今までの境遇がそう思わせてしまっているだけなんだよ、と言いたくなりました。

 

隠れ家の次は、ロズベルグ卿の滞在するホテルに。

たぶん安全じゃないな、と思っていたらやっぱりあんまり安全ではありませんでした。

ロズベルグ卿が、神がリリィちゃんの死を望んでいるという神託を授かったとのこと。オルロックが思った以上に動揺していたのはびっくりしました。長い沈黙と『は……?』という言葉に動揺した気持ち全てが詰め込まれている気がします。

絶対に守ると誓ったリリィちゃんを、殺さなければならない。絶対的に信じていたロズベルグ卿の言葉をどうしても受け入れられなくて、疑問に思い始めて。でも疑問を持つことは今までの自分の行動を全て否定することに繋がる。きっと私が想像する以上の苦しみと苦悩を感じていたのではないでしょうか。

リリィちゃんを殺したくない、守りたい、リリィちゃんが死ぬべきだとどうしても思えない、という言葉。何を信じたらいいのか分からないと、苦しげな様子は、私までも苦しくなりそうで、見ているのがつらかったです。最終的にロズベルグ卿のもとにはいられないと決断し、次第に自分の意思を持ち始めて嬉しいですね。

 

そして今度はストラノ地区に。

ルカの死により、また胸が痛む展開でした。神の存在を信じ続けて生きてきたオルロックが「神なんていない」と、怒りや悲しみといった負の感情を出してくるとは思ってもいませんでした。きっと今まで抱かなかった感情だろうから、自分の感情を落ち着かせたり整理するのは難しかったことでしょう。

でもそんな時にリリィちゃんが支えてくれる。オルロックにとって、たしかにリリィちゃんは「救い」だなと。

 

終盤でストラノ地区での老鼠との戦い、教会でのヴィスコンティとの戦いの後に控えていたのは、やはりファルツォーネとの戦いでした。というよりも、ダンテさんVSオルロックの戦いでした。

ダンテさんを殺した時に『……あなたを殺すことは謝らない。代わりに、おれはあなたを一生、忘れない。あなたの命を奪った罪を、ずっと抱えて生きていく。』と言ったのがとても印象的です。

 

最後まで二人は逃避行し続けるのだろうかと思っていたけれど、エミリオさんが保護したんですね。それはちょっと安心しました。

オルロックにとって得るものもあったけれど、同時に多くのものを失い、多くのものを背負うシナリオだなと。とても精神を削られるルートでした。

ダンテさんの心情も見えるルートだから、ダンテさん好きにはつらいルートですね。オルロックルートのダンテさんはトラウマレベルで恐ろしい…。

 

あととてもどうでもいい話ですが、オルロックルートの個人的イメージについてとか。

空のグラスにゆっくりと水が注がれていって、一度はグラスの水が溢れてしまうけれど、最後はグラスには適量の水が残るような、そんなイメージがありました。

グラスはオルロックの心で、水はオルロックの感情。水の増減は感情の揺れ幅。水差しは、多分沢山ある。リリィちゃんとか、今までに関わってきた人たちの分だけ存在する。本当にただの個人的イメージな話なので、たぶん誰にも伝わらない。

 

■FINALE/アンリ・ランベール

ディレットーレの中の人を見た時に、「どうして攻略対象ではないのか……。いやしかし中の人的な意味で絶対に何かしら裏があるのでは?」と思っていたら予想通りラスボスでした。

作中で一番の被害者だと思います。背負っているものの規模が違いすぎる。

彼自身は元々普通の人間だったはずなのに、どの出来事にもマフィアが絡んでいたことによって「普通」から外れていった存在の人。

 

姉が鍵の乙女であったが故に両親は殺されて、その姉はファルツォーネの後継者と自分が結ばれることを心から信じていたけれど次第に精神を病んで亡くなってしまって。その後はファルツォーネの遠縁に養子に出されて、その家では酷い扱いを受けて。

それからは自分が生きる為に自分を利用して、そのうち他人を利用して。人間の醜悪さを知っているから、人間が嫌いで触れたくないと。なんかもう…。泣きそうです。

きっかけはどれもマフィアが絡んでいるのだから、マフィアに復讐心を抱くのは当たり前な気がします。彼の経験してきた苦しみを思えば、彼の復讐を止めることなんてできない。リリィちゃんに対して『君だけは、この狂った使命から解放したいと。』と言っていたけれど、姉とリリィちゃんを重ねて見ていたのかな。

でもリリィちゃんと問答を交わして、その後に姉と似ているけれど違うと呟くんですよね。姉とリリィちゃんは別の人間だと認識した瞬間なのでしょうね。

終盤でカジノが焼け落ちていく中で、自死しようと思っていたところにリリィちゃんが現れて「リリィちゃんは姉ではないのだから生きていてほしい」と考えていたところ、とてもよいです。

 

エンディングにて、「自分は罪を犯してきたから、いつか誰かの怨嗟によって殺されるかもしれない。それも仕方のないことだしどんな罰を受けても当然だと思っている」とか「生きている限り悪夢に縛られ続ける」とか、彼の心の闇が完全に取り払われていない悲しさよ…。彼の今までを思えば、致し方ないですが。

でもそんな中でも人に触れることを嫌っていた彼がリリィちゃんの頰にキスしたのは彼の心にほんの少し、何かしらの変化があってのことなのかな…。

ゆっくりでいいから、リリィちゃんと過ごしていく中で少しでも幸せだと感じてほしいし、笑っていてほしいと思いました。

 

■FINALE/大団円

アンリさんエンドを先に見てしまっていたので、切ないような、複雑な気持ちが残りました。

カジノが爆発した時にアンリさんはダンテさんに撃たれていたけれど、死んだのか、それとも隠し通路から逃げたのか、どちらなのでしょうか。焼け落ちたカジノから死体が見つからなかったと書いてあるから、後者でしょうか。

そういえばFINALEルートはロベルトの成長過程とか、楊さんが教会に双子を置いていくかと言った後の双子のやり取りとか、サブキャラクターにも焦点を当てていた話を読むことができたので楽しかったです。

 

***

 

最後に。

攻略対象が死ぬとか、バッドエンドのえげつなさとか、ハッピーエンド至上主義にとってはつらいことも多々あったんですけど、それでもシナリオは面白くて恋愛過程も自分好みだったので、とても楽しみながらプレイすることができました。

そういえばこの会社単体での作品、とても久々に購入した気がします。いつも他社とのコラボ作品しか購入しなかったので、プレイして自分に合わなかったら嫌だなと思っていたのですが、杞憂でした。

暴力的なシーンが苦手、大人な雰囲気の恋愛シーンを見るのが苦手、という方でなければ楽しめるかなと思います。